地震による家具の転倒を防ぐ災害対策(5)

「重い物は低いところへ−当り前のことも忘れずにね」


災害対策:暮らしのなかのアドバイス

大切な美術品はパテなどで固定を
高価な調度品や美術品のためには、転倒防止剤としてパテなどが市販されています。
なかには美術館などで使われているものもあります。

余震に備えて、下段の引き出しは出しておく
大きな揺れの後にゆとりがあれば、余震に備えて、たんすなどの一番下の引き出しを手前に出しておくと良いでしょう。
倒れようとする家具を支える役目を果たします。

ストーブの片付けは必ず電池を外してから
春を迎えて、押し入れなどにストーブをしまう時、つい忘れがちなのが乾電池を外すことです。
電池が入ったままだと、地震の揺れによって点火してしまい、火事を起こす可能性があります。
特に押し入れは、燃えやすいものが収納されているので、ご注意を。

倒れにくくする原則は重心を下げること
重い物ほど下に入れる−これは家具を倒れにくくするための大原則です。
たとえば、食器棚では陶器やガラスでできた大きくて重いもの、本棚では百科事典や全集などの重い本を下段に入れると、家具全体の重心が下がるので倒れにくくなります。
重い物が高い位置から落ちてくる時の危険性も考慮すると、やはり下に入れた方が良いでしょう。

ゴムのシートを敷いて食器類の滑り止めに
食器棚などの棚板にゴムシートを敷くと、器類が滑りにくくなります。
ただし、ビニール系のシートを敷くと、逆に滑りやすくなるので、お間違えのないように。

吊り戸棚の扉にはロック機構の付いたものを
吊り戸棚や食器棚などに多く使われる開き扉は、日常の使用では実用的ですが、地震時には開きやすいという欠点があります。
なかでも吊り戸棚の場合、揺れによって扉が開くと、収納物が上から飛び出してきて危険です。
できれば、閉じた時に自動的にロックされるタイプを選ぶと良いでしょう。
また、揺れが治まったからといって吊り戸棚をすぐに開けると、中で倒れている物が落下してくることがあります。
十分に注意しながら開けてください。

食器棚のガラスには飛散防止フィルムを
食器棚やサイドボードのガラス面は、家具が倒れなくても中の収納物が、飛び出そうとする衝突力で割れる恐れがあります。
こうしたガラスや食器の破片が床に飛び散ると、ケガのもと。
しかも、避難路を防いでしまいます。
ガラス面は、万が一割れても破片が飛び散らないよう、ガラス飛散防止フィルムをぴったりと貼ると良いでしょう。



「家具の配置にも工夫が大切なのね」



災害対策:すまい方の工夫

さて、家具の転倒を防ぐための固定は大切ですが、住宅の立地や構造など、さまざまな条件によって揺れ方が違うので、必ずしも万全とはいえません。
そこで、安全という面から家具の置き場所を見直すことも、転倒などによる被害を防ぐための大きなポイントとなります。

就寝位置や出入口と家具との関係は重要

たとえば家具の配置と、ふとんを敷いたりベッドを置く、いわゆる就寝の位置との関係です。

壁を背にした家具は前方に倒れてきますから、就寝位置は、家具の高さ分だけ離れるか、家具の 脇に決めた方が安全です。

また、家具が倒れて出入口を塞がれてしまっては大変です。

家具は出入口付近に置かない、あるいは万が一倒れても通り抜けられる空間を残せる位置に置くようにしましょう。





災害対策:家具の固定方法3

「冷蔵庫やピアノもそのままでは危ないよ」

災害対策:家具の固定方法3

ところで忘れがちなのが、冷蔵庫やテレビ、電子レンジといった家電製品や、ピアノなどの転倒防止策です。
一見、転倒とは縁遠いようですが、実は、倒れるだけではなくて、冷蔵庫が歩き出した り電子レンジが宙を飛ぶといった事例が報告されています。
まずは専門知識のあるメーカーに問い合わせる
しかも家電製品は、日常的に電気を通しているわけですから、金具などの取り付けにもいっそうの注意が必要です。
メーカーによっては製品専用の転倒防止金具などを用意している場合もありますので、まずは販売店やメーカーに問い合わせてみましょう。

そのうえで、以下の注意点が考えられます。
たとえば、壁に冷蔵庫を固定する場合、金具を取り付ける壁の位置は、家具の場合と同じように桟の入った部分でないと効果はありません。
また、テレビや電子レンジなど、置き台に乗せて使用するものは、台と本体を金具などでしっかり連結する必要があります。
同時に、こうした製品にはキャスターの付いたタイプが多いので、キャスターを取り外しておくか、台輪をはかせて移動を防いだほうが良いでしょう。
ただし、フローリングの床の場合は、キャスターを付けたままで移動させた方が転倒をしないケースもあります。
ピアノの場合は、なんといっても重量が問題でしょう。
たとえばグランドピアノは250kg以上もあり、地震時の衝撃の大きさによっては、脚が折れてしまうケースがあります。
対策の方法は置き場所によっても異なりますし、楽器本来の機能を損っては元も子もありませんので、専門知識を持つメーカーなどへ問い合わせることをおすすめします。

メーカーの対策例1 ピアノの場合



災害対策:家具の固定方法2


家具を置きたい位置の壁のなかに、しっかりとした桟を見つけることができたら、いよいよ金具の取り付けにかかります。

壁への固定はL型金物で

固定のための金具にはL型金物と木ネジを用い、L型金物を壁の桟に対して直角に家具の上部に置き、木ネジでとめます。 ただし、木ネジは壁の桟に届かないと効果がないので、ボードの厚みを考慮する必要があります。 しかも、家具の上部ならどこでも良いというわけではなく、両端部分の、しかも家具自体の桟が確実に入っている位置に金具を取り付けましょう。家具の桟が入っていない位置では、金具を取り付けても確かな効果は得られません。 また、一般的に壁の縦桟は30cmあるいは45cmの間隔で入っていますから、家具の幅や置きたい場所によってはうまくあわない場合があります。 そこで、家具の位置を自由に決められるよう、家具の高さに合わせて、横木を壁の桟に取り付けます。その横木に、L型金物で家具を固定するわけです。


積み重ね家具は上下を連結

上下に積み重ねて使う家具は最上部だけを壁の桟に固定しても、重ねた部分が地震で揺れるとずれてしまい、前にせり出して転倒する危険があります。 面倒でも家具の側面などで上下を連結したうえで最上部を壁の桟に固定するか、上下の家具それぞれを壁の桟に固定すれば確実です。



やむを得ない場合は天井で家具を支える

ところで、壁のなかに桟が入っていないために、家具を固定できない壁があります。
この場合は、設計図などで天井の強度を確認のうえ、家具を天井で支える方法が考えられます。
たとえば、高さ調整式の上置型すき間埋め収納ユニット。
これは、高さを調整しながら、突っ張った広い面で天井と家具との間を支えるタイプです。
また、衣装ケースなどを家具の上に置く方法もあります。この場合は、ゴムシートなどを敷いてすべらないように注意することと、天井との間にすき間が生じないよう新聞紙などをしっかりと挟み込まないと効果はありません。
なお、家具と天井の間を広い面ではなく点で支える、いわゆる突っ張り棒タイプのものは、家具と天井との間が大きく空いている場合や、奥行きのない家具に使用しても、あまり確かな効果を期待できない場合があるので、注意しましょう。
やむを得ず使う場合は、図のように、家具の両端の奥に取り付けます。




災害対策:家具の固定方法1

「壁ならどこにでも固定できるってわけじゃないよ」

災害対策:家具の固定方法1

さて、地震で揺れても家具が倒れないよう正しく固定するには、どうすれば良いのでしょうか。
それには、家具が地震の揺れに対して建物と一体的に動くように柱や鴨居、壁などに固定することが大切です。
しかし、最近では、昔からの日本家屋のようにしっかりした木の柱や鴨居のある家は少なくなってきたので、壁への固定が最も一般的な家具の固定方法といえます。

見かけは同じでも、実は違う壁の内側
ひと口に壁と言ってもいろいろな種類があります。
たとえば、木造の戸建住宅には真壁、大壁、2×4(ツーバイフォー)の壁が多く用いられています。
また、集合住宅などにはコンクリート壁や断熱材の入った防露壁などが用いられています。
そして、木造の戸建住宅でも集合住宅でも、木造軸組壁と呼ばれる木の桟のある間仕切りのための壁が使われています。
こうした壁には、家具を固定できる壁と、固定してはいけない壁があるので注意しましょう。



肝心なのは壁の中の桟を探すこと

家具を壁に固定するには、まず、壁のなかに隠れている桟を探し出す必要があります。
桟には、縦方向の縦桟と横方向の横桟がありますが、縦桟を見つけられれば、家具の高さにかかわらず、壁に固定することができます。
この縦桟の位置を確実に知るには、やはり設計図を手に入れるか、施工会社に問い合わせることです。
しかし、そういう手立てがない場合は、ドライバーなどの太い柄の部分で、壁を2cmずつ横にずらしながら叩いてみましょう。
桟は、30cmあるいは45cmに1本の間隔で入っているケースが多いようで、桟の入っている部分と空洞の部分では、音や感触に微妙な違いが感じられます。
叩いてみて固いコンコンという音がしたら、そこには桟が入っていると考えてよいでしょう。
桟が入っていない部分は、叩くと太鼓状に響く音がします。
ここに固定のための金具を取り付けても、効果は期待できません。
なお、ホームセンターやDIYショップでは、壁の桟を見つけるためのセンサーやプッシュピンが市販されています。これらを活用すると、より正確に桟を見つけることができます。





縦桟の探し方

家具を固定できない壁もある
ところで、最近の集合住宅に使われるS1壁やGL壁といった防露壁には桟が入っていないので、壁に直接、家具を固定することはできません。
そのうえ、コンクリートに発泡スチロール系の断熱材を 接着しているため、もしも家具を固定した場合、地震で揺れると家具の重さで壁の表面がはがれてしまう危険性があります。
一般的に防露壁の使用範囲は限られていますが、特にS1壁の場合、叩いた時の音や感触がコンクリート壁と間違えやすいので注意が必要です。

壁の種類がわからないときは専門家に相談を
多くの集合住宅の戸境壁はコンクリートでできていますが、なかには軽量鉄骨を桟とし、両側にボードを貼った乾式戸境壁を使うことがあります。この壁は、遮音や耐火の問題上、穴をあけることはできません。
このように、壁には種類が多く判別が難しいので、不明な点がある場合は、必ず工務店などの専門家に相談しましょう。
そのうえ、集合住宅の場合、賃貸住宅はもとより分譲住宅でも、隣戸との境の壁や外部に面する壁は、一般的に共用部分とされています。勝手にコンクリート壁に金具などを取り付けることはできない場合があるので、管理事務所や管理組合に確認をする必要があります。



災害対策:家具転倒のメカニズムを知る

「へえ。家具って、こんなふうに倒れるの」


重心が低ければ安定するはずだが...



一般に家具であれ、建物であれ、ものにはすべて重心があり、それぞれの重心の位置は、プロポーションつまり幅や奥行き、高さ、そして重量などによって決まります。
この重心が、低ければ低いほど倒れにくいはずですが、造り付けでない家具のように床の上に置いただけのものは、重心の低い物であっても、実際には建物の構造や階数、置かれた部屋の状況によって倒れやすさが違ってきます。
たとえば、建物が鉄筋コンクリート造の集合住宅であるか、それとも木造の戸建住宅であるかなどによって揺れ方は違いますし、同じ集合住宅でも、建物の高さや階数によっても、揺れ方は違います。


家具は形や置かれた条件で多様な動き方をする
こうした建物本体の揺れ方、家具それぞれの揺れ方、あるいは家具を置いた床材の種類などによって、家具は様々な動き方をするわけです。
具体的には、洋ダンスや冷蔵庫のような背の高い家 具や家電製品には、前後に揺れながら歩いて移動してしまうロッキング移動と呼ばれる動きもみられます。
また、食器棚や整理ダンスのように積み重ねてある家具の上の部分や、テレビ台に載っ たテレビなどがジャンプをしたり落下するケース、あるいはロッキングを起こさずに床面を滑って移動をするケースなど、置かれた条件によってその動きは多様です。


家具を転倒させないためには固定が必要
地震で大きく揺れても、家具が動かないようにするには、大きな力が必要です。
たとえば、家具の上部で支えるケースでは、家具の全重量の1/2以上の力が必要となります。
いずれにしても、地震の揺れによる家具の転倒や移動を防ぐためには、できるだけ建物本体に、家具をより安全に固定しておきたいものです。



「家具が倒れると逃げ道まで塞がれて恐いね」

出典「総務省消防庁」

阪神・淡路大震災に見る家具転倒の状況

平成7年1月17日午前5時46分、
兵庫県南部を襲った直下型地震は、マグニチュード7.3、震度7を記録、死者行方不明者は6千人を超えました。
また、負傷者は4万3千人を数え、そのなかには建物に特別な被害がないにもかかわらず、家具の転倒や散乱によって、逃げ遅れたり室内でケガを負った方も多数含まれています。
これは、室内に家具や電化製品などを多く置くようになった近年の住宅事情によると思われます。



約6割の部屋で家具が転倒、散乱した

この阪神淡路大震災における震度7の地域では、住宅の全半壊をまぬがれたにもかかわらず、全体の約6割の部屋で家具が転倒し、部屋全体に散乱したというデータ(※1)があります。
しかも、ただ倒れるだけでなく、食器棚などは扉が開いて中の食器類が散乱し、また、冷蔵庫やピアノは移動してしまいテレビや電子レンジが飛ぶといった、日常では考えられない現象も確認されています。
つまり建物が無事でも、家具が転倒するとその下敷きになってケガをしたり、室内が散乱状態のために延焼火災から避難が遅れてしまうなど、居住者被害も大きくなるというわけです。
※1 日本建築学会「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」

内部被害による怪我の原因

震度5強でタンスが倒れることも
平成8年2月に気象庁が発表した震度階級関連解説表によると、「震度5強」で"タンスなど重い家具が倒れ、テレビが台から落ちることがある"と想定されています。
わが国では平成5年から7年ま
での三年間に、震度6以上の強い地震が数回あったうえ、震度4や5といった地震は珍しくありません。
室内での居住者被害を防ぎ、安全な避難経路を確保するためにも、家具を固定しておくことが重要です。



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